研究の背景
Cash for Work(キャッシュ・フォー・ワーク/以下CFW)とは、災害復旧・復興事業に被災者を雇用し、賃金を支払うことによって、被災者の自立を促すと同時に、よりよい災害対応や復興を実現する手法のことです。1960年代のアフリカにおける難民支援において、労働対価として食糧を提供したFood for Work(FFW)を前身とし、1990年代以降、主に途上国において大規模災害や紛争の場面で実施されるようになりました。
東日本大震災では、我が国でも初めて本格的にCFW が実施されました。政府によって被災者を雇用するための制度が創設され、岩手・宮城・福島の被災三県で平成23年度中に約32,000人、平成24年度には30,000人の被災者が雇用されました。先進国において実施されているという点、肉体労働だけでなく事務労働が多く含まれているという点において、これは世界的にも注目すべきCFWの事例です。
大規模災害やテロの脅威、経済問題等を抱える先進諸国においてCFWの有効性は高く、先進国における緊急的な雇用創出技術としての確立とそのための研究が求められています。
研究目的と方法
本研究は、東日本大震災の発生後、我が国でも急速に広まりを見せたCash for Workの実態を、就労者へのアンケート調査や被災地域の労働市場の分析などによって明らかにし、それがどの程度被災地の雇用維持や経済復興に貢献したのかを評価するものです。
また、その雇用を生み出したスキーム(行政・民間企業・NPOなどによる具体的連携方法)によって、復興状況等にどのような違いが生じるかを分析します。
こうした調査・分析を通じて、今後の巨大災害発生時における社会技術としてCFWの方法論を開発すると共に、それを下支えする公共政策を提案していきます。
研究方法
- 1.就労者調査:CFWに参加した被災者を対象にしたアンケート調査を実施。
- 2.労働市場調査:緊急雇用施策等が労働市場に与えた影響を調査。
- 3.復興環境調査:被災地の復興過程と段階別の就労ニーズを調査。